「名古屋弁の単語を並べられても、どれが本当に使われていて、どういう意味なのか分からない」——名古屋に引っ越してきた方や、名古屋出身の同僚・パートナーの言葉に戸惑っている方から、よくそんな声を聞きます。テレビで聞く「でら」「だがや」だけが名古屋弁だと思っていると、いざ現地の会話に入ったときに肝心なところで話についていけません。
結論から言うと、日常でいちばん多いのは派手な言葉ではなく、「机をつる」「これほかっといて」のように、共通語だと思って使っている“通じない言葉”です。この記事では、今も名古屋で実際に使われている名古屋弁を意味・例文つきで一覧に整理し、間違えやすい言葉、語尾やイントネーションのコツ、さらに「やっとかめ」などの面白い由来まで、まとめて解説します。
読み終わるころには、名古屋の人の会話に「今のは、こういう意味か」とついていけるようになり、自分でも自然に一言まぜられるようになります。難しい暗記は不要で、よく出る言葉から押さえれば十分です。名古屋暮らしや名古屋旅がぐっと楽しくなるはずです。
- 今すぐ使える名古屋弁の意味と例文が一覧でわかる
- 「えらい」「つる」など間違えやすい言葉の正しい意味
- 語尾・イントネーションで名古屋っぽく話すコツ
- 「やっとかめ」など言葉が生まれた面白い由来
そもそも「名古屋弁」ってどんな言葉?尾張と三河でこんなに違う

名古屋弁は愛知県西部「尾張弁」の一種
名古屋弁とは、名古屋市を中心とした愛知県西部(旧・尾張国)で話される方言を指します。愛知県の方言は大きく、名古屋市や一宮市など西部の「尾張弁」と、豊橋市・岡崎市など東部の「三河弁」の2つに分かれます。一般に「名古屋弁」と呼ばれるのは、このうち尾張弁のことです。
同じ愛知県でも尾張と三河では語尾やイントネーションがかなり違い、地元の人は聞いただけでどちら側の出身か見分けます。たとえば理由を表すとき、尾張では「だもんで」、三河では「だで」と言う傾向があります。名古屋弁を学ぶときは、まず「名古屋弁=尾張弁の一種」と押さえておくと、ネットで見かける『愛知の方言一覧』のどれが名古屋のものか整理しやすくなります。
なお、名古屋市の公式サイトでも「名古屋ことば」が文化として紹介されており、やわらかく温かみのある響きが特徴とされています。方言は恥ずかしいものではなく、地域の文化そのものです。
「みゃーみゃー言葉」の正体は連母音融合
名古屋弁といえば「みゃーみゃー」と猫が鳴くような響き、というイメージを持つ人が多いですが、その正体は「連母音融合」という発音現象です。「うまい(umai)」の「ai」がひとつの音にまとまって「うみゃー(umyaa)」に、「ない(nai)」が「にゃー」に変化します。
この「ai→ゃー」「ui→ゅー」といった母音の融合が、独特のやわらかい響きを生んでいます。ローマ字にすると仕組みが見えやすく、「高い(takai)→たきゃー」「赤い(akai)→あきゃー」も同じ変化です。
ポイントは、実際の会話ではテレビで強調されるほど「ミャーミャー」とはっきり発音していないこと。本物はもっとやわらかく、共通語に近い音の中にふっと混じる程度です。誇張されたイメージのまま真似すると、かえって不自然になってしまいます。
実は日常会話は“みゃーみゃー”していないという逆張り
意外と知られていないのですが、名古屋の若い世代の普段の会話は、想像するほど濃い名古屋弁ではありません。「みゃーみゃー」した発音が強く出るのは、年配の方や、ネタとして誇張するときが中心です。20〜40代の日常会話は共通語ベースで、そこに「だで」「〜しとる」「だもんで」といった語尾や、「ほかる」「つる」といった動詞がさりげなく混じる、というのが実態に近いでしょう。
つまり、名古屋弁をマスターしたいなら、まず覚えるべきは派手な「でら」「だがや」ではなく、生活の中で自然に出る語尾や動詞です。この記事でも、まず日常会話で頻度の高い言葉から順に一覧化していきます。派手な単語の暗記より、頻出語を数個覚えるほうが、ずっと早く「通じる」ようになります。
【一覧】日常会話でよく使う名古屋弁と意味を例文つきで
ここからは、名古屋で実際によく耳にする名古屋弁を、意味と例文つきの一覧で紹介します。まずは使用頻度が高く、覚えておくと会話がぐっと分かりやすくなる定番の言葉からです。
| 名古屋弁 | 意味(共通語) | 例文 |
|---|---|---|
| でら/どえらい | とても・すごく | でらうみゃー(とてもおいしい) |
| だがや | 〜だよ・〜だぞ(断定) | これ、うみゃーだがや |
| だがね/がね | 〜だよね(やわらかい) | 今日は寒いがね |
| だもんで | 〜だから・〜なので | 雨だもんで、行かんわ |
| 〜しとる | 〜している | 何しとるの? |
| えらい | 疲れた・しんどい | 今日はえらかった |
※名古屋暮らしガイド調べ。頻度は日常会話での出やすさの目安です。
「でら」「だがや」——名古屋弁を象徴する2大ワード
まず押さえたいのが「でら」と「だがや」です。「でら」は「とても・すごく」を表す強調語で、「どえらい」が縮まってできた比較的新しい言葉。「でらうみゃー(とてもおいしい)」「でら混んどる(とても混んでいる)」のように、感情や状態を強めたいときに文の頭に付けます。
「だがや」は「〜だよ」「〜だぞ」と断定を強める語尾で、力強く男性的な響きです。「これでいいがや」で「これでいいんだよ」という意味になります。ただし、実際の会話では「だがや」よりも、次に紹介するやわらかい「だがね」のほうがよく使われます。
注意点として、「でら」を連発すると“いかにも名古屋弁を練習している”感が出てしまいます。強調したい一言にだけ添えるのが自然です。まずはこの2語の意味を知っておくだけでも、名古屋の人の会話のニュアンスがつかめるようになります。
「だがね」「だもんで」——会話をなめらかにする語尾
日常でいちばん出番が多いのが、語尾の「だがね」と接続の「だもんで」です。「だがね(がね)」は「だがや」をやわらげた言い方で、「〜だよね」と軽く同意を求めたり、感想を共有したりするときに使います。「今日は暑いがね」のように、短い文に添えると自然な名古屋弁になります。
「だもんで」は「〜だから・〜なので」と理由をつなぐ表現です。「時間ないもんで、先行くわ」のように、省略した「もんで」の形もよく使われます。この2つを使えるだけで、会話がぐっと名古屋らしくなります。
よくある間違いは、「でら」「だがや」ばかり足してしまうこと。実際の会話でリアルなのは、こうした語尾・接続語のさりげない使い分けです。派手な単語より、まず「だがね」「だもんで」を自然に混ぜられるようになるのが、名古屋弁上達の近道です。
「〜しとる」「行こまい」——動詞まわりの名古屋弁
名古屋弁では「〜している」を「〜しとる」と言います。「何しとる?(何してるの?)」「待っとるよ(待ってるよ)」のように、進行や状態を表す場面で頻出です。西日本の方言に広く見られる形で、聞き取れれば会話の理解度が一気に上がります。
誘うときの「〜まい」も特徴的です。「行こまい(行こうよ)」「やろまい(やろうよ)」のように、仲間を誘う軽いニュアンスで使います。年配の方だけでなく、部活やご近所づきあいの中でも耳にする言葉です。
補足として、これらは女性でも男性でも使いますが、「だがや」のような強い断定は男性寄り、「だがね」「〜だわ」はやわらかく男女問わず使われます。相手や場面に合わせて語尾を選べるようになると、名古屋弁がぐっと自然になります。
「机をつって」に戸惑う人続出|生活シーンで飛び交う言葉

名古屋弁で本当に厄介なのは、「でら」のような“いかにも方言”な言葉より、共通語のつもりで使われる生活語です。ここでは、引っ越してきた人が実際に戸惑いやすい言葉を集めました。
学校や職場の掃除で「そこの机つって」と言われ、意味が分からず固まってしまう——転入生・転勤者に非常に多い失敗です。原因は「つる=運ぶ・持ち上げる」という名古屋弁を知らないこと。対策はシンプルで、「つる=運ぶ」とだけ覚えておけば、いざ言われても慌てず動けます。
「つる」「ほかる」——動作を表す要注意ワード
「つる」は「運ぶ・持ち上げる」という意味です。共通語の「つる(吊る)」とは別物で、「机をつる」は「机を運ぶ」。学校の掃除の時間の定番フレーズで、名古屋出身者にとっては全国共通だと思っている人も多い“隠れ方言”の代表格です。
「ほかる」は「捨てる」という意味。「これほかっといて」で「これ捨てておいて」になります。「放(ほか)る」が語源とされ、東海地方で広く使われます。ゴミを「ほかる」と言われて「保管しておく」と勘違いすると真逆になるので要注意です。
豆知識として、これらは名古屋の人自身が方言と気づいていないことが多い言葉です。だからこそ引っ越し直後にいちばん戸惑いやすく、逆に意味さえ知っておけば、生活シーンでのすれ違いをほとんど防げます。
「まわし」「ときんときん」——準備と状態の言葉
「まわし(をする)」は「準備・支度をする」という意味です。「明日のまわし、しとりゃあ(明日の準備しておいて)」のように使います。相撲の「まわし」とは無関係で、段取りや下ごしらえを指す生活語です。
「ときんときん(ときん)」は、鉛筆などが「鋭く尖っている」様子を表す擬態語です。「鉛筆ときんときんにしといて」で「鉛筆をよく削って尖らせておいて」。小学校の思い出とともに語られることが多い、かわいらしい響きの言葉です。
注意したいのは、これらは辞書的な意味を知っていても、初見では文脈から推測しづらいこと。「まわし=準備」「ときんときん=尖っている」とセットで覚えておくと、家庭や学校の会話でつまずかずに済みます。
「ケッタ」「どべ」——学校・遊びで飛び交う言葉
「ケッタ(ケッタマシン)」は「自転車」のこと。東海地方で広く使われ、語源は「蹴ったくる(力強くこぐ)」など諸説あります。「ケッタで行くわ(自転車で行くよ)」のように使い、子どもから大人まで通じる定番語です。
「どべ」は「びり・最下位」という意味。「かけっこでどべやった(かけっこでビリだった)」のように使います。ネガティブながらどこか愛嬌のある響きで、スポーツや順位の話題でよく登場します。
これらは学校生活や遊びの場面で自然に飛び交う言葉です。子育て世帯で名古屋に引っ越してきた方は、お子さんが学校で耳にして帰ってくることも多いので、親が先に意味を知っておくと家庭での会話もスムーズになります。

名古屋を1泊2日で旅行する予定だけれど、どの順番でスポットを回れば効率がいいのか迷っていませんか。名古屋は東西南北に観光スポットが散らばっているため、ルートを考…
名古屋めしを100倍楽しむ「うみゃー」まわりの言葉たち
名古屋グルメを味わうなら、味やお店にまつわる名古屋弁も知っておくと楽しさが倍増します。地元の人と同じ言葉で「おいしい」を伝えられると、会話も弾みます。
「うみゃー」「でらうみゃー」——おいしいの最上級
「うみゃー」は「うまい・おいしい」の連母音融合形で、名古屋めしの感想では必ずと言っていいほど登場します。「これ、うみゃーなも」「でらうみゃー(超おいしい)」のように使い、味噌カツやひつまぶしを頬張ったときにぴったりの一言です。
強調したいときは前に「でら」を付けて「でらうみゃー」。逆に「まずい」は「まっずい」と伸ばして言うこともあります。お店で使うと店員さんが笑顔になる、コミュニケーションのきっかけになる言葉です。
注意点として、「うみゃー」はかなりくだけた表現なので、フォーマルな場では「おいしいですね」が無難です。気心の知れた場面や、名古屋めしを楽しむカジュアルな食事のときに使うのがちょうどよい塩梅です。
「こわけ」「ちんちん」——食まわりの意外な言葉
「こわけ(小分け)」は文字どおり分けることですが、名古屋では日常的によく使われます。「取り皿にこわけしよか(小皿に分けようか)」のように、大皿料理をシェアする場面で頻出です。
驚かれやすいのが「ちんちん(ちんちこちん)」で、「熱々に熱い」という意味。「このお茶、ちんちんだで気をつけて(とても熱いから気をつけて)」のように使います。初めて聞くと戸惑いますが、名古屋では飲み物や鍋の熱さを表すごく普通の言葉です。
豆知識として、こうした食まわりの言葉は喫茶店や飲食店で耳にする機会が多いもの。名古屋は喫茶文化・モーニング文化が盛んな土地柄なので、お店で自然に方言に触れられます。意味を知っておくと、名古屋めし巡りがいっそう味わい深くなります。
「うみゃーなも」の「なも」は、「〜ですね」にあたる古風で上品な丁寧表現です。名古屋市公式サイトでも紹介される伝統的な言葉づかいで、今ではお年寄りや芸どころ(花街)の言葉に残っています。使う機会は少なくても、知っておくと名古屋ことばの奥行きが感じられます。
お店で使える名古屋弁フレーズ集
飲食店で自然に使える名古屋弁を少し挙げてみましょう。「これ、こわけできる?(取り分けできますか)」「お茶、ちんちんだね(熱いですね)」「でらうみゃかったわ(とてもおいしかった)」など、味や温度、シェアにまつわる言葉が実践しやすいフレーズです。
ただし、観光客が無理に名古屋弁で通そうとすると、かえってぎこちなくなることも。基本は共通語で、感想の一言だけ「うみゃー」を混ぜる、くらいが自然で好印象です。地元の人も、旅行者が方言を知っていてくれると距離が縮まって嬉しいものです。
名古屋はラーメンや味噌文化など独自のグルメが多い街です。名古屋めしのお店選びに迷ったら、あわせて食の情報もチェックしておくと、方言と味の両方から名古屋を楽しめます。

名古屋のラーメンといえば、味仙の台湾ラーメンや麺屋はなびの台湾まぜそばが有名ですが、実はそれだけではありません。薬膳スープが身体に染み渡る「好来系」、魚介出汁が…
語尾とイントネーションで一気に名古屋っぽくなるコツ
単語を覚えるだけでなく、語尾やイントネーションを押さえると、名古屋弁らしさがぐっと増します。ここでは“それっぽく話す”ための実践的なコツを紹介します。
語尾は「だがね」「だで」「だもんで」を使い分ける
名古屋弁らしさの決め手は語尾です。同意を求める「だがね」、理由を表す「だで/だもんで」、状態の「〜しとる」を、場面に応じて使い分けると自然になります。「今日は暑いがね」「時間ないもんで、行くわ」「もう始まっとるよ」といった具合です。
逆にやってしまいがちなのが、どの文にも「でら」や「だがや」を足してしまうこと。これだと“作り物の名古屋弁”になってしまいます。リアルな名古屋弁は、強調語より語尾のさりげない切り替えで成り立っています。
コツは、まず「だもんで」を一つ会話に入れてみること。理由を言う場面は日常に多く、自然に練習できます。慣れてきたら「だがね」「〜しとる」を足していくと、無理なく名古屋っぽい話し方に近づけます。
イントネーションは平坦・後ろ下がりが基本
名古屋弁のイントネーションは、共通語に比べて平坦で、語尾がすっと下がる傾向があります。たとえば「名古屋(な↓ごや)」のように、頭を強く上げず落ち着いた抑揚で話すと、それらしく聞こえます。
また「みゃー」「にゃー」といった連母音融合の音は、はっきり「ミャー」と言うのではなく、やわらかく短めに発音するのが本物に近づくポイントです。強調しすぎるとネタっぽくなり、地元の人からは「わざとらしい」と感じられてしまいます。
注意点として、イントネーションは文字だけでは習得しづらい要素です。名古屋の人の会話やローカル番組を聞いて、耳から真似るのがいちばんの近道。単語の意味と合わせて音のリズムをつかむと、聞き取り力も一気に上がります。
シーン別・名古屋弁の使いどころ
名古屋弁は、場面によって使い分けるのが賢い付き合い方です。引っ越し直後は、まず「つる」「ほかる」など生活語の“聞き取り”に徹すると、日常のすれ違いを防げます。職場では、無理に方言を使わず共通語ベースにしつつ、「だもんで」など語尾だけ合わせると打ち解けやすくなります。
飲食店や旅行中は、「うみゃー」「でらうみゃー」を一言添えるだけで会話が弾みます。年配の方との会話では、「なも」「やっとかめ」といった古風な言葉を知っておくと、相手の話が理解しやすく、喜ばれます。
大切なのは、全部を一度に使いこなそうとしないこと。まずは聞き取り、次に語尾、最後に単語、という順で少しずつ広げれば十分です。相手や場面に合わせて“混ぜる量”を調整するのが、いちばん自然で好印象な名古屋弁の使い方です。
意味を取り違えると危険|共通語と紛らわしい言葉
名古屋弁の中には、共通語にも同じ言葉があるのに意味がまったく違う、という“危険な言葉”があります。取り違えると会話が噛み合わなくなるので、ここでしっかり整理しておきましょう。
体調を気遣って「えらい?」と聞かれたのに、「偉い(立派)」の意味だと思って「いえいえ」と謙遜し、話が噛み合わない——名古屋あるあるの失敗です。原因は「えらい=疲れた・しんどい」という意味を知らないこと。対策は「えらい=疲れた」と覚えておくこと。「えらいなら休みんさい」は「疲れているなら休んで」という優しい気遣いの言葉です。
「えらい」は偉いではなく「疲れた」
最も間違えやすいのが「えらい」です。名古屋弁では「疲れた・しんどい」という意味で、「今日はえらかった」は「立派だった」ではなく「今日は疲れた」。体調が悪いときにも「なんかえらいわ(なんだかしんどい)」と使います。
共通語の「偉い(立派だ)」と同じ言葉なので、初めて聞くと確実に混乱します。とくに体調を気遣う場面で誤解すると、相手の心配が伝わらず、すれ違ってしまいます。「体がえらい=体がしんどい」と、身体の話とセットで覚えると間違えません。
補足として、この「えらい=疲れた」は西日本に広く見られる用法です。名古屋に限らず関西などでも通じるので、覚えておくと東海・西日本での会話全般で役立ちます。
「かう」「はよ」「あらすか」——意味を知らないと逆になる言葉
「かう」は「(鍵などを)かける・締める」という意味で使われることがあります。「鍵かっといて」で「鍵をかけておいて」。「買う」と勘違いすると意味が通じなくなるので注意です。
「はよ」は「早く」の意味で、「はよ行こまい(早く行こうよ)」のように急かすときに使います。「あらすか」は「あるものか」という強い否定で、「そんなことあらすか(そんなことあるわけない)」と言い切る表現です。
これらは意味を取り違えると、相手の言いたいことと逆に受け取ってしまう危険があります。とくに否定表現の「あらすか」「〜せんわ」は、肯定と勘違いしやすいので要注意。文脈と表情もヒントにしながら、意味を確かめる習慣をつけると安心です。
紛らわしい名古屋弁 早わかり対応表
| 名古屋弁 | つい誤解しがちな意味 | 本当の意味 |
|---|---|---|
| えらい | 偉い・立派 | 疲れた・しんどい |
| つる | 吊るす | 運ぶ・持ち上げる |
| ほかる | 保管する | 捨てる |
| かう | 買う | (鍵を)かける |
| ちんちん | (幼児語) | 熱々に熱い |
※名古屋暮らしガイド調べ。誤解しやすい代表例をまとめました。
この5つは、名古屋暮らしで実際にすれ違いが起きやすい言葉です。まずここだけでも押さえておけば、生活の中での大きな勘違いは防げます。一覧をスクリーンショットしておくと、いざというとき安心です。
「やっとかめ」の語源が面白い|言葉が生まれた背景
名古屋弁の魅力は、意味だけでなくその由来にもあります。言葉が生まれた背景を知ると、名古屋の歴史や文化まで見えてきて、ぐっと親しみが湧きます。
「やっとかめ」は「八十日目」——粋な言葉遊び
名古屋弁を代表する言葉「やっとかめ」は「久しぶり」という意味で、漢字では「八十日目」と書きます。「八十日も会っていない=ずいぶん久しぶり」という、洒落の効いた言葉遊びが語源です。「やっとかめだなも(お久しぶりですね)」のように使います。
実際に八十日ぶりという意味ではなく、「長らくご無沙汰しました」というニュアンス。数字を使って時間の長さを表す、機知に富んだ表現です。名古屋では「やっとかめ文化祭」というイベント名にも使われるほど、地元で親しまれています。
豆知識として、この言葉は落語や芸どころ(花街)の文化とともに受け継がれてきました。名古屋が城下町として栄え、独自の芸能文化を育んだことが、こうした粋な言葉の背景にあります。
京言葉の影響と城下町・名古屋の歴史
名古屋弁には、京言葉の影響も見られます。「たくさん」を表す「ようけ(余慶)」「ぎょうさん(仰山)」などは、京の都から伝わった言葉づかいです。名古屋が江戸時代に尾張徳川家の城下町として栄え、上方(関西)とも江戸とも交流があったことが、言葉に反映されています。
名古屋市公式サイトでも、「なも」「えも」といった語尾や、「さま」を使った敬称(にいさま=兄など)が、名古屋ことばの上品でやわらかい特徴として紹介されています。武家文化と町人文化が混ざり合った土地柄が、独特の言葉を育てました。
こうした歴史を知ると、名古屋弁が単なる“なまり”ではなく、地域の文化そのものだと分かります。名古屋城をはじめとする城下町の歴史とあわせて眺めると、言葉の背景がより立体的に見えてきます。

「名古屋城城主って誰だったの?」――名古屋城を訪れると、金のシャチホコや石垣の迫力に目を奪われますが、この城を居城とした人物についてはあまり知られていません。名…
今も残る言葉、消えつつある言葉
名古屋弁の中には、世代を超えて広く使われ続けている言葉と、年配の方にしか残っていない言葉があります。「だもんで」「〜しとる」「ほかる」「ケッタ」などは今も現役で、若い世代も日常的に使います。
一方、「なも」「やっとかめ」「ようけ」といった古風で上品な言葉は、日常会話では聞く機会が減り、お年寄りや伝統文化の場面に残るのみとなっています。方言の世界でも、時代とともに使われる言葉は少しずつ移り変わっているのです。
だからこそ、こうした言葉を知っておくことには意味があります。消えつつある言葉を記録し、意味を理解しておくことは、地域の文化を次につなぐことにもなります。より詳しい語彙は、ウィキペディアの「名古屋弁」の項目や、専門の名古屋弁辞典サイトでも調べられます。
名古屋ことばの背景や語彙は、以下の情報源でも確認できます。
・名古屋市公式ウェブサイト「名古屋ことば」
・Wikipedia「名古屋弁」
・名古屋弁辞典
まとめ|名古屋弁は“頻出語”から覚えれば通じるようになる
名古屋弁は、テレビでおなじみの「でら」「だがや」だけではありません。日常でいちばん役立つのは、「だもんで」「〜しとる」といった語尾や、「つる(運ぶ)」「ほかる(捨てる)」「まわし(準備)」といった生活語です。とくに「えらい=疲れた」のように共通語と紛らわしい言葉は、意味を知っているだけで、日々のすれ違いをぐっと減らせます。
覚える順番は、①聞き取り(生活語)→②語尾(だがね・だもんで)→③単語や強調語(うみゃー・でら)の順がおすすめです。全部を一度に使いこなそうとせず、よく出る言葉から少しずつ広げれば十分。イントネーションは名古屋の人の会話やローカル番組を耳で真似るのが近道です。
そして名古屋弁は、「やっとかめ=八十日目」に見られるように、城下町として栄えた名古屋の歴史や文化と深くつながっています。言葉の意味だけでなく背景まで知ると、名古屋という街そのものがもっと面白く感じられるはずです。
まずは今日、身近な名古屋の人との会話で「だもんで」を一つ使ってみることから始めてみてください。それが、名古屋の言葉と文化に一歩近づく最初の一歩になります。
※本記事の情報は執筆時点のものです。方言の意味・使い方には地域差・世代差があります。最新の情報は名古屋市公式サイト等でご確認ください。

コメント